―プロローグ―

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「え~っ、まだなのぉ!?」 親友の向井千恵の大袈裟なリアクションに 私は大慌てで、口を押えた。 「声がでかい!し~っ!!」 「それ…まじで!?」 「言えるワケないよ…だって…彼、今ようやく出版社も決まって  ようやくカメラマンとして本格的に走り出したばっかなのに…そんな時に…」 「またそうやって、愛莉は相手に合わせて自分の気持ちを抑え込む~。癖だよね ~絶対」 「そんなこと…だって、渡君がどれだけ頑張ってきたかとか、努力してきたかと か傍で一番見てきて分かってるつもりだし…」 「だからって、自分の気持ち抑え込むのは違うよね」 「べっ…別に抑え込んでなんかない。好きでこうしてるだけだもん!そろそろ休 憩終わるよ。  戻ろう!!」  私はそういうと、広げていた弁当を包みなおすと、いそいそと席を立つ。 「愛莉…ちょ…もう~、聞いて!これは愛莉一人の問題じゃないんだからね~」 お人よしで人の問題にちょくちょく首をつっこんでくる、千恵の大きな声を背に向けて 私は自分のデスクに向かった。 彼、渡真柴君と私は、大学卒業後全く違う道を進むこととなった。 私は小さな印刷会社に就職が決まり、彼は大学時代から目を付けて貰っていた 有名カメラマンの助手として、活躍し始めた。 言えるわけない。 私は彼が撮る作品が好きだった。 クリエイターとして生きる彼が、生き生きとしていて 大好きだった。
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