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息を整えると彼はばーんとわたしの眼前にあるものを突き出した。
それは赤ちゃんのエコー写真だった。
「なっ…なぜ、それを…」
「君の親友の向井さんから、ずっと預かってた!!わざわざ会社に訪ねてきたんだぞ!俺がどんなにびっくりしたか、わかるか!?」
千恵ったらいつのまに…。
ていうか、私ったら預けたまま帰って来ちゃってたの?
なんてドジ…。
「だ…て…しあわせになって欲しかったんだもん…わたしと、赤ちゃんがいたら
負担になるから…!!」
「俺の幸せを君が決めるな!!」
「君がいて…子供がいて…好きな写真が撮れて…これ以上の幸せはないよ!」
「渡君チャンスなんでしょ!?子育てとか、結婚とか負担になるよ!わたしとこ の子が、渡君の重荷になるのはやだ…」
零れ落ちる涙を拭うのも忘れ、私は途切れ途切れに言った。
「俺がこの何か月間か、倍の努力が出来たのは、誰のお蔭か知ってる?」
私の涙をハンカチで拭いながら彼は続けた。
「君から言い出してくれるのを待ってた。俺はきみとお腹の子の為に全力で戦う。 覚悟が出来たのはこの写真のお蔭なんだ…」
彼はくしゃくしゃのエコー写真をみつめた。
小さい点は心臓。
早くも命は躍動を始めている。
「俺はプロのカメラマンとしてきっと成功してみせる。だから…俺と結婚してください」
指にはめられたのは小さなおもちゃの指輪だった。
思わずぷっと笑う。
「急でこんなのしか用意できなかったの!あーもう君ってひとは…」
「ごめーん…」
「もうどこにも行くなよ」
出会った時と同じ、強い瞳」
「うん」
帰り道は、手を繋いで満月を眺めながら帰った。
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