Memory

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 そして翌日の放課後、早坂美波のクラスがわからない僕は教室で待っていた。 親しい間柄であるのならば、きっとクラスに来るはずだ。 クラスメート達はなにやら僕の顔を見ると、見てはいけない何かを見てしまったかのようにどこかへ行ってしまう。 僕はもしかして何か大事なことを忘れているのだろうか。だがし かし、現実にそんなアニメや漫画のようなことが起こるとも思えな かった。 「ごめんごめん、待った?」  早坂美波がクラスに来たのは、丁度僕のクラスの最後の一人が帰った時だった。 すぐに質問をしようとして俺は口を開くが、 「よし、ほら、早く行こう」  早坂美波はそれに気づく様子もなく俺の手を引っ張って歩き始めた。 出鼻をくじかれてしまったが、何も今すぐでなければいけないわけでもない。 それに、どうせなら学校を出てから聞いたほうがいいのかもしれなかった。 「まったく、メールくらい返してよね」 「あ、あぁ、ごめん。来るとは思ってなかったから」  思わず出てしまった本音に早坂は眉をひそめる。 言ってはいけなかっただろうかと心配しかけたところで、そもそも自分が心配する必要なんてないのだと気付いた。  どうにも調子を崩されているらしい。 「ほとんど毎日送ってるのに」  車道と反対側を向いて僕から視線をそらした早坂は不機嫌そうだ。 だがこちらからしてみれば特に返信をする義理があるわけではないのだから、怒られても困る。  やがて視線を僕のほうに戻すと、早坂はじっと僕の瞳を見つめ、そして頭のてっぺんからつま先まで、未知のものを見るかのように眺めた。 「諒、何かあった?」 「……? いや、なにもないよ」  正確に言えば今目の前に居る早坂美波こそが「何か」ではあるのだが、本人の目の前ではそんなことは口が裂けても言えない。 どんな人間に対してであれ、失礼であることは自明の理だ。
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