Memory

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 久しぶりの練習が終わって部員たちはそれぞれ仲のいい友達と笑い合っている。 顧問の鈴木は早々と職員室へと戻ってしまったから、ここにいるのは全員生徒だった。 「帰ろう」  自分から早坂に声をかけたのは『自分の記憶する限り』初めてだった。 早坂は特に驚くわけでもなく話していた女子たちに別れを告げるとこちらに来た。 そうして歩き始めて学校を少し離れたところ。僕は覚悟を決めて口を開いた。 「ちょっといい?」 「え? いいよ」  話を途中で止められたせいか、早坂の言葉は語尾が上がっている。 単純に不思議に思っているのだろう。 この数日間、僕は早坂の言葉を途中でとめたりしていなかったし、もしかしたら俺の記憶にないところでも、僕は早坂の話を遮ったことがなかったのかもしれない。 「なんで。なんで、俺たちは付き合ってもないのに一緒に帰ってる んだ?」  緊張のせいか的外れのことを聞いてしまった。 だが、この言葉は早坂にとってどうやら衝撃的なものだったようで、先ほどまでの笑顔が嘘のように表情が固まった。 「諒、なんの冗談?」  下を向いてしまった。 泣いているのだろうか?  だが僕は自分が何か悪いことをしたようにはとても思えなかった。 「冗談じゃないけど、ごめん。聞きたいのはそう言うことじゃないんだ……なんて言えばいいのかな」  まさか相手に僕と同じ学校に居たのか、などと聞くわけにもいかない僕は自分の少ない知識の中から言葉を掘り出しては投げ捨て、掘り出しては投げ捨てを繰り返し、焦っていた。 「ごめん。今日は、帰るね」  その間に、早坂美波は明らかに涙でその瞳をいっぱいにして、走り去ってしまった。  僕はぼんやりと、あれだけ走ったのにまだ走れるなんてすごいな、と呑気なことを考えていた。
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