Memory

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 それからしばらく、僕の周りは俺の記憶していた通りの状態に戻った。 一つ違うことがあるとすれば部活に早坂美波がいることだが、それも会話をしなければ大して意味を成さないことであった。 新入生が一人増えたと思えば変わりない。 「なあ……お前、美波ちゃんと何かあったのか?」  休憩中、突然口を開いたかと思えば進の質問はそんなものだった。 何かあったのか、と聞かれると僕は困ってしまう。 あったといえばあったのかもしれないが、僕からしてみればどうにもわからないことだらけで何と説明すればよいのか全く分からない。 「……とくに、なにもないよ」  だから笑ってごまかした。 おそらく、この十三年もの付き合いがある友人はすぐに気付いてしまうだろうけれど、それでもいいと思った。 というより、それでもどうしようもないのだ。  練習に戻ろうとすると、早坂美波がなにか女子に囲まれているのが見えた。 前に話していたのとは違う女子だ。 以前そのうちの一人に告白されたことを思い出して、あわててその記憶を遠くに押しやった。 「あれ、美波ちゃんいじめられてね?」 「まさか、そんなことないだろ」  軽く笑って僕たちはその場を離れた。 早坂の視線が一瞬だけ僕の ほうをむいたことには気づいていたが、目を合わせるようなことはなかった。  だが見てしまった以上は気になってしまう。 それから数日間、僕はたびたび早坂が同じ女子に囲まれて泣きそうになっているのを見かけた。 本当にいじめなのかもしれない。今までいつ見かけても彼女は友人と一緒に居たものだが、今はいつ見ても一人だ。  そしてもう一つ、おかしなことには僕はクラスの人から妙な扱いを受けている。 一度だけ見たことのあるそれは確か、なにか不幸のあった人に対する対応であったはずだ。 しかししばらくの間、うちの親類には不幸なことが一切起こっていないし、友人に起こったとすればそれは他の皆にも共通していることだ。
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