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「嘘……?」
嘘をついただけでいじめられるなんてあるのか、などという疑問が浮かんだが、そもそも男と女は別の生物だと考えるべきだ、と言っていた理科の先生の言葉を思い出した。
「うん、嘘」
どんな嘘なのか聞こうとすると、チャイムが鳴ってしまった。
堂坂はどうやら次が体育らしい。ごめんね、とだけ言うと足早に帰ってしまった。
また疑問が残ったままである。
放課後になったが運悪く部活前も後も、堂坂とは会えず仕舞いだった。
部活には早坂は毎日来ている。だからわかってしまうのだが、早坂は日に日に表情を暗いものにしていた。
どうやら最近は部活で仲の良かった人とも話せていないようだ。
「早坂、大丈夫なの?」
帰り際、早坂に追いついた僕はそう訊ねた。
ご飯も食べられていないのだろうか、早坂は体をふらつかせながら振り返る。
振りかえった顔が笑顔であることに僕は驚いた。
「何のこと? 私はいつも通りだよ」
声には前に聞いた時の元気がない。近くで見ると少しだけ髪が短くなっている。状態もあまりよくはない。
何かされたのかもしれないと考えると、ようやくことの深刻さを理解した。
途端、噂が思い出されてなんと言えばいいのかわからなくなってしまった。
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