Prologue

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 洗面所で鏡を見るとやはり僕は泣いていた。特に悲しいことや辛いことなんて本当になかったのだが泣いている。 まさか本当に夢を見て泣いていたのだろうか。  そう考えた瞬間、痩せた女性の顔が頭の中に映った。口元以外がよく思い出せない。 誰だろうか。これが今日見ていた夢なのだろうか。  顔を洗うと、泣いていたあとはだいたいであるが消えた。目が少しだけ赤くなっているが気づかれるほどではないだろう。 リビングでは既にお父さんがご飯を食べていた。味噌汁に焼き魚、それにおひたしだ。いつもの我が家の朝食である。  と、目が潤ってきたのがわかった。 僕を見たお父さんがご飯を食べる手を止めてこちらを見る。そして立ちあがってお母さんと同じように僕の頭を撫でた。 「どうした、諒。ほら、ご飯を食べよう」 「う、うん」  涙がこぼれるのを何とかこらえて朝食を食べ始めると、また涙がこぼれそうになる。 何かの病気だろうか。プールに入った時に何か菌が目に入ってしまったのかもしれない。  お母さんがやってきてご飯を食べ始める。その瞬間にまた、僕は涙を流しそうになる。
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