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「そうだ、諒。明日三時にあなたのクラスに行けばいいのよね?」
「廊下に椅子が出されてると思うから、そこに座って待ってて」
そういえば明日は三者相談だ。
四日間だから木曜日まで部活はない。
「諒はどこの高校に行くつもりなんだ?」
お父さんの表情からは相変わらず感情が読み取れない。
最近はずっと笑顔に近い表情をしていた気がしたのだけれど、気のせいだったのだろうか。
「家に近いところかな。学力的にも問題はないしね」
「頑張れよ」
ごちそうさま、とお父さんが言うと、お母さんがすぐに食器を下げた。相変わらず行動の一つ一つが素早い。
どことなく久しぶりに感じるのは長い夢を見ていたせいかもしれない。
さっきの女性の夢は普通の夢が頭が冴えてくるのと同時に消えて行くのに対して、段々と、白黒の写真に絵の具で色をつけていくように不格好にだけれど、確かに思い出してきた。
ただ最後に言った言葉以外はどうにも思い出せない。
「ほら、食べ終わったなら用意しなさい。今日も学校でしょ?」
「はーい」
歯磨きをしにもう一度洗面所に行くと目はほとんど白色をしていた。これなら絶対に気づかれないだろう。
安心して学校に行くことができる。
白一色のワイシャツに袖を通して家を出た。
朝の風は爽やかで心地よかったが、ワイシャツの下に着た学校指定の紺色のジャージがその風が肌まで届くのを妨げている。折角の白いワイシャツの色も変色させてしまうしこのジャージは本当にやっかいだ。
「ロボットみたいね、って何のことなんだろう」
しばらく家の前で立ち止まって考えるが心当たりのことは一つもない。
しかし所詮は夢。
いつかは忘れてしまうことだろう。
西側の青い空を灰色の雲が覆い始めていた。
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