Memory

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 朝の青空から一変し、放課後の空は黒く掴んでしまえそうな質量をもつ雨雲に変わっていた。 雨が降っている。夏のにわか雨であればよいのだが、降り始めてからかれこれ二時間はたつ。  今日が三者相談だった友達たちは親と車で帰ってしまった。残っている人はもうほとんどいない。 家までの距離およそ一キロが果てしなく遠く感じられる。 後三十分待って止まなかったら諦めて走って帰ろうと決めた。 「久しぶり」  声を掛けられて振り返ると知らない女子生徒が立っていた。 学年ごとに異なるシューズの色は僕と同じ黄色である。 しかし、見たことがない。県で一番のマンモス校であるから、三年間通っていて一度も話したことがない生徒がいるなんてことはよくある。だが、見たことのない生徒なんているものだろうか。 久しぶり、なんて言っているからには相手は僕のことを知っているのだろう。 周りには他に人がいる様子はないし、いたずらをしているとは思えない。 「久しぶり」  とりあえず同じように言ってみた。 もしかしたらど忘れかもしれない。 それに目の前の女の子の笑顔は、飼い主とはぐれて三ヶ月後に再会を果たした子犬のようだ。 尻尾があったら間違いなく左右に大きく振っていることだろう。そんな女の子の期待を裏切ることは僕にはできない。 「雨すごいね。全然やまなそう。諒はどうするの? 歩き? 私の親が少ししたら来るんだけど、乗ってく?」
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