19人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよう。留奈君。朝だ。
起きたまえ。」
唸る様な駆動音。
そして、大人びた声が聞こえる。
「うっ……先生。」
日差しもささない地下室にベッドと机だけのさみしい部屋。
まるでシェルターの様な部屋が本作、主人公の神崎留奈の部屋である。
「早く起きたまえ。
由奈君が待っているそ。」
「叔母さんが?」
起きたての寝ぼけた顔で辺りを見回し、ゆっくりベッドから降りると長く綺麗な黒髪をそっと手で梳かし、大きく背伸びをする。
「うむ。早くしないと朝食が冷めてしまうと言っていた。
爺さんも首を長くして待っているぞ?」
「わかった…今いくよ……」
留奈に先生と呼ばれるこの男の名は、上条拓也。
先の魔王戦で英雄と共に戦い、下半身を失った名医。
今は、失った下半身を機械で補い、留奈達や生存者の治療にあたっている。
「うむ。待っている。」
拓也は留奈を起こすと機械的垂直な動きで振り返り部屋を後にする。
「………。まだ眠い。」
だが皆が待っている。
留奈は、壁にかけてあるローブをベッドに置き、寝間着をゆっくり脱ぎ捨て、白いワンピースに着替えると、部屋を後にする。
「………。今日も墓参りいこうかな……。」
弥の地と呼ばれる氷雪地帯に行き、氷漬けになった父に花を手向け、其の後、母の墓に行きてを合わせるのが留奈の日課となっていた。
最初のコメントを投稿しよう!