プロローグ

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今年で二十歳となる由奈に、子育ての経験などあるはずもなく、留奈にはほとほと手を焼いていた。 「私があの子と同じくらいの時はもっと大人しかったわよ。」 「うむー。それは無いんじゃないかな? 大量の本をリュックに詰めて、持てないから持ってとか言ってたの……誰だっけかなぁー?」 「うるさいわよ…ほっといて…」 昔のことを蒸し返された由奈は、少し御立腹の様だ。 長年共に戦ってきた拓也だからこそ、笑になる。 「飯はまだかのう……」 「お爺ちゃん…今食べたでしょ? さぁ、部屋に戻りましょう。」 「玲奈さんや…」 だが、康介は2度とまともな事を言えない。 車椅子に乗せられ、優真と共に食堂を後にする。 「玲奈さんや…」 と言う康介の声だけが廊下に響き渡っていた。
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