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「雨の日の都市伝説って知ってる?」
「んーん、知らない。どんなの?」
「あのね……」
* * *
【メアリー】
昨夜から降り続いている雨は未だ止む気配を見せてはいなかった。空という空間のどこに、これだけの水を蓄えているのだろう。
そう思いながらカーテンを開ける。
灰色の街。
朝日も鳥の声もない朝。
背後では男が、昨晩床に脱ぎ落とした服を身に着け始めた。
服を着る男の姿って余所余所しい。
目の端に男を捕らえながらキッチンに向かう。
「何か飲む?」
「いや、いい。すぐに出るよ」
短いやりとり。
自分にだけインスタントのコーヒーを作りながら、男が服を着て出ていくのを見送った。
ドアの閉まる音を聞いて、熱く苦いコーヒーを一口啜る。
気だるい朝。
濃厚な一夜が嘘のよう。
いつだって朝というのは人を夢から覚ます。
コーヒーカップを手に、リビングに戻るとパソコンとテレビの電源を入れた。
テレビでは朝のワイドショーが巷で話題となっている事件を報道している。
パソコンが立ち上がると、私はいつものサイトにアクセスした。
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