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【鈴本隆夫】
「くそっ!」
第2の事件が起きた。
捜査は行き詰まっている。
そんな中、マスコミの報道だけが過熱。世間は次の事件を待っているかのようで、それがまた俺を苛立たせた。
「鈴本さん、口が悪いですよ」
相棒の北原杏が俺をたしなめる。
童顔で肩より長い髪を1つに結びグレーのスーツを着る彼女は、まだ若い刑事だ。
「すまん。だが都市伝説殺人事件だとか煽りやがって」
「でも犯人が都市伝説を意識している可能性はあります。最初の事件は人面犬を、2つ目の事件は口裂け女をモチーフにしているように見えるのは確かですから」
北原は冷静に話をする。
俺よりもずっと落ち着いている。
「問題は、それによって犯人が割り出せるのか、犯人の次の行動が予測出来るのか……ですね」
そのとおりだ。都市伝説になぞらえた犯行だとして、それがどこまで手掛かりとして重要視すべき事か。
手掛かりと言えば、マスコミに流していない情報がある。その意味も不明だ。
俺は取り調べ室のドアを開けた。事件に関する情報があると署にやって来た男に会う為に。
その情報提供者はポツンと立っていた。
「悪いね、部屋がなくて。座って」
男はペコリと頭を下げ、パイプ椅子に座る。
よれよれのシャツにジーパン。背は高く華奢。長く伸びた前髪が目にかかっているが、綺麗な顔立ちの男だ。年は20代半ばだろうか。
まずは互いに自己紹介する。
情報提供者の名は赤貝冬士。
「それで、情報というのは?」
椅子に座ると話を切り出した。
北原は横に立たせている。
「被害者は自分の管理するサイトのメンバーです」
俺は思わず息を飲む。
それが本当なら被害者同士が繋がる。
「たぶん犯人も……」
おいおい、こいつは一気に捜査が動くぞ。
もちろん、まずはこの話の信憑性を調べる必要がある。
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