プロローグ

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いくつもの小さな照明に照らされる中、ざわざわとした大勢の声が、収容人数5万人を超える広い空間に響き渡る。 とたん、その場は照明が消され、暗闇と静寂に包まれた。 数分後。ギターの音が合図だったのだろう。会場は赤、黄、青…今度はカラフルなライトによって照らされる。 ステージに立っていた2人が声を発した。 「今日は僕達『Our Trace』のライブにお集まりいただきありがとうございます!」 「みんな楽しんでってくれな!!」 大きな歓声が上がった。 私はあの2人が憎い。 私から大切なものを奪った彼らは、そんなこと忘れて平然と生きている。 【Our Traceは人殺しのバンド】 このことをマスコミに流せば、Our Traceは私の中から消えるだろうか。 この長年背負ってきた苦しみから、悲しみから、そして憎しみから、私は、開放されるだろうか。 そんなことを考えながら、観客席の最後列に座っていた━…。
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