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……眠い。
自業自得とはいえ、昼休憩を終えた後のデスクワークは恐ろしいほどに睡魔を呼び寄せて、意識を保つのに苦労する。
ダメだ、このままじゃ。
強烈なミントのタブレットをこっそり噛み、スーパークールと銘打たれた目薬を点す。
目と口の中がひりつくほどミントの刺激を与えて強制的に目を開けた。
「秦野さん、ちょっといい?」
顔を上げると、ようやく風邪から復帰した中島さんが、傍らに立っていた。
パーテーションで区切られたフリースペースで、中島さんは資料を広げて話始めた。
「この間は、本当にありがとう。助かったよ。
お陰で導入が決まりそうだ」
「わーっ、良かったですね!!」
中島さんはふっと笑う。
「僕の顔を立ててくれたんだってね」
「えっ?」
「あれから鳥居さんとこにプレゼンできなかったことお詫びに行ったんだけどさ、秦野さんがちゃんと応対してくれて、僕に引き継ぐって説明してくれたから安心したって言ってた」
良かった……心からほっとした。
鳥居さんはあの時あんな風に言ってくれたけど、心のどこかで差し出がましかったんじゃないかと思っていたから。
「あと、越智に牽制入れたんだって?」
「えっ?そんなことしてませんよ?」
中島さんは、クスクス笑って声を潜めた。
「あいつと僕とは、仕事のやり方が違うんだよね。
多分、秦野さんは僕と考え方が近いんだと思う。
秦野さんが自然にした対応は、越智にとっては牽制になったと思うよ」
思いがけない「牽制」という言葉に眉を潜めた。
「プレゼンしたの秦野さんだから、鳥居さんは僕がいないときは秦野さんを頼ってくると思う。
手は取られるかもしれないけど、協力してもらえると助かる」
机に着くほど深く、中島さんは頭を下げた。
「もちろんです。出来るだけ鳥居さんたちが使いやすいように設計したいですから」
「ありがとう。越智じゃなくて秦野さんがプレゼンしてくれて良かった」
言葉の端々が気になる。
越智さんのことをあまり良く思っていないのが見てとれる中島さんの態度。
「牽制」が気になって、つい聞いてみた。
「私が牽制したってどういうことですか?」
中島さんは肩を竦めて笑った。
「んー、そのうちわかるんじゃない?
だって付き合い始めたんでしょ、越智と」
中島さんの言葉に驚いた。
付き合い始めた……訳じゃないと思う。
まずはお互いを知ろうって、それだけで。
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