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ふうぅぅ……
満足感に満ちた息を吐き出して、ずっと俯いていたせいでガチガチになってしまった首筋を伸ばすために頭を後ろに反らした。
上気する頬と、どうしようもない高揚感を抑えようと、私は携帯を持つ右手を左手で包み込んで目を閉じる。
……羨ましい。
すごく、すごく憧れる。
最近の私の趣味。
携帯小説、恋愛ものを読み漁ること。
高校生が主人公の、あの何もかもが楽しく感じた時代を思い起こす学園ものも好きだけど。
どろどろしてて、恋愛の綺麗なところも醜いところも写し出す、大人の恋物語が特に好き。
もどかしくて、じれったくて、一筋縄では結ばれないドキドキ感が好き。
そして、紆余曲折の末、やっと思いが通じて結ばれるときが堪らない。
そんな携帯小説にはまった私が、自分の欲望に気がついたのはつい最近のことだ。
耳元で意地悪く囁かれたい
羞恥心を煽られながら乱れたい
翻弄されて、浅ましく快楽を貪って、声を枯らしてみたい
さっきまで瞬きをするのも忘れて見入っていた携帯小説を思い描いた。
主人公が私だったらいいのに。
そうして、彼が「千里」って私の名前を囁きながら噛みつくようなキスをしてきて……
小説の通りに行動を追う。
組み敷かれる身体。
降り注ぐ吐息。
そして……
ああああっ、ダメダメ!!
これ以上はダメ!!
脳内で膨れ上がった妄想を打ち消したくて、立ち上がって頭を振った。
冷めやらぬ興奮に体が疼く。
気を許せばすぐにでも胸元に向かって動き出しそうな手を理性で律すると、自分に言い聞かせるように大きく「あーーっ」と声を出しつつ息を吐き出した。
はあ。
どれだけ飢えてるんだろ、私。
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