融かされたい

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痛い足を引きずってアパートの自分の部屋の前まで帰ると、やっとこのパンプスを脱げることに安堵した。 ドアを開けて上がり口に座り込み、片足ずつ持ち上げて、踵を擦らないようにゆっくり足を抜く。 はあ~ えもいわれぬ解放感に、ついつい大きな息を吐いた。 しばらく履けないなあ てか、履くのかな、これ 試しに履いたときはしっくり来たパンプス。 デザインが好きで、仕事にも差し支えなさそうだから選んだのに。 足、浮腫んじゃってるのかな ストッキングに包まれた土踏まずを指圧する。 薄いベージュの上からでも解るほど踵は赤くなっていて、左は少し皮が捲れていた。 よし。今日は念入りにお風呂に入ろう 鈍い動作で立ち上がり、壁に手をつきながらお風呂場へ行った。 洗面所でストッキングを脱ぎ、とりあえずお湯を張る。 お気に入りのバスソルト……絶対傷口に滲みるよね 今日はやめとこう 香りも楽しみたいし、疲れも取りたいし、乾燥してきたから肌ケアもしたい いつもなら、粉末タイプで毒々しい色をしたチープなやつ使うけど、今日は贅沢する!! そう決めて、一袋ずつ販売されているリキッドタイプの入浴剤を選んだ。 玄関に放置した鞄とコンビニの袋を取って、キッチンを素通りして部屋に入る。 小さな炬燵台と、シングルベッド、小さな書棚には気に入って買った小説と僅かなCD。 この狭い空間が私の城だ。 週末、テーブルがわりの炬燵台に布団をかけよう そんなことを思いながら、袋を漁ってパスタのトレイを取り出した。 「いただきます」 あらかじめ温めてもらったパスタは既に温くなっていたけれど、ずるずると啜りながら片手に携帯を持つ。 乗り物の中で携帯の文字を追うのは苦手。 あの揺れで気持ち悪くなってしまう。 昼休みにサイトに目を通せなかったから、サイトを開くのは今日初めてで、その分しおりを挟んだ連載小説に未読部分がたくさんあってちょっと嬉しくなった。 だけど、読み始めてしまうと離れられなくなるから。 美味しくも不味くもないパスタを胃の中に入れ、「ごちそうさま」と呟くと、シンクにトレイを下げた。 まずはお風呂にゆっくり入ってからだ 今日はマッサージもする ちょっとだけでも見たくなる気持ちを抑え、テーブルにスマホを置いて、お風呂場へ。 お気に入りで温存していた入浴剤は、香りも肌触りも申し分ないけれど、やっぱり傷には滲みた。
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