154人が本棚に入れています
本棚に追加
足首を両手で包み、指先にやや力を入れてふくらはぎに向かってゆっくり揉んでいく。
リンパ、流れろー
頭の中で念じながら、両足に施す。
太ももが太いのが悩み。
ここの肉が胸にいってくれたらよかったのにと思いながら、両手で挟んで揺らした。
たぷたぷと波打つ、ほんのりピンクがかった濁り湯。
肩までどっぷり湯に浸かり、バスタブの縁に頭を乗せる。
ああ、至福の時間だ。
気持ちよさに目を閉じてうっとりしていたのに。
『キス顔』
『今度見つけたらするからね』
唐突に甦ったしたり顔。
ざばーっ!!!
勢いよく上半身を起こしたので、バスタブから湯が溢れだす。
なんなのよっ
出てこないでよね!!
はい、終わり終わり!!
顔にぱしゃんと湯をかけて気持ちを切り替えると、湯船から立ち上がった。
更新分を読み進める。
……わぁ、一難去ってまた一難。
……社長でイケメン、こういう出会いがほしいもんだわ。
……っきゃー!!やっと通じたよ!!ドキドキしてきた!!
どの作品にもそれぞれに魅力がある。
「リアルではなかなかないよ、そんなの」って思う設定でさえものめり込めるもの。
切なくて痛くて「早く幸せにしてあげてよ」って思うもの。
主人公を自分に置き換えて、たくさんの恋模様を楽しむ。
もちろん、話の展開によっては「これは私なら無理だわ」というのもあるし、ヒーローより第二の男の方が好みだったりする場合もある。
ある作品が大量更新されていた。
昨日までの更新では、お互いの誤解が溶けて、やっと通じあうか?と言うところまで来ていた。
心を通わせた二人は……いきなりベッドイン。
……あー、そうなるんだ。
大人の恋だし、長く想いあってたから……それもありだと思うけど……。
なんだかんだと妄想を膨らませ、誰かに狂わされたいと思っている割には、私は二の足を踏むタイプで。
そんなにすぐには身体を開けない。
スタイルに自信がないのもあるし、結局は身体だけの関係を良しとしない深層心理もあるんだと思う。
越智さんなら後腐れはない、そう思いながら迫ったり媚を売ったりしないのは、結局は気持ちの伴わない交わりを否定する、生真面目で面倒くさい性格がついて回っているから。
物語の人物から、自分を切り離した。
文字を追う。
もちろん、高揚感はある。
ただ、なんとなく自分に近い主人公だと思っていただけに……寂しかった。
最初のコメントを投稿しよう!