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蔦の這う白亜の礼拝堂。
それが、この学園の象徴であり歴史を伝えるものであった。
それ故、卒業生の多くが保存を望み
今日まで取り壊されずにきた。
移築され修復は繰り返されたが床材の一部は大正期のもので、飴色の艶を湛えている。
須藤香純は、礼拝堂が好きだった。
マリア像もない、ステンドグラスもない。
それでも、年月に研かれた長椅子の角の丸みや、
斜めに差し込む光、
荘かな木の十字架に囲まれていると、静かな心持ちになった。
教義を理解しているとは言い難いし信仰に篤いというわけではない。
ただ、牧師様の声は優しく、日々を感謝して簡潔に生きていく、その姿には憧れた。
一方で華やかなものへ惹かれてしまう。少女らしく小さな虚栄心や恋への憧れも持っていた。
その揺らぎは、開花前の蕾が人知れず緩みゆくように、大人への過渡期に皆が経験するものなのだが........
香純は、いつか内面の相反を誰かに........例えば牧師様に見破られてしまうのではないかと思っていた。
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