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「ほら、ね。ここに座って聴くと音の印象が違うでしょう」
先輩は、和音を押さえる
見上げると、金銀のパイプがそそり立ち、空気の進路を追ってしまう。
「すごい........なんだか機械、いえ、ロボットみたい」
「私もそう思ったわ。こんなにパイプばかりの装置から、こんなに温かい音が出るなんて、って。」
そうして先輩は
「主よ人の望みよ喜びよ」
を弾いた。
音は伸びやかに空間を支配し、私達二人の境目をなくすかのように溶けた。
最後の音の余韻をたっぷりと残して、指を離した。
先輩と目を合わせて、ふふっ、と笑った。
そのまま、先輩の長い睫毛に縁どられた目を見ていると、今更ながら緊張を思い出した。
憧れの先輩の髪に触れそうなほど近づいている。
「ねえ、もしかして須藤さんは帰りたくない理由でもあるのかしら」
ああ、やはり見透かされてしまった
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