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「あの、私........そろそろ」
立とうとした時に、膝に手が置かれる。
「話してご覧なさいな。ここにいるのは二人だけ。神は許して下さるわ」
布地越しにじんわりと温かさが伝わった。
「五月の帰省の折に、家族で食事に行きました。そこで........両親に男性を紹介されました」
胸が高鳴るのは、秘密を打ち明けることのためか、先輩の髪から漂う花の香りのせいだろうか。
「男性は、高坂さんといって二年程前から弟の家庭教師をされていた方です。
何度か車を見かけたことはあったのですが面識はなく........今思えば、両親が高坂さんの優秀なことや、礼儀正しいことを度々話題にしていたのも不自然でした」
「まあ........それで?」
「食事のあと、二人でテラス席でデザートを頂きました。
そのあと、父たちは帰ってしまって」
先輩は、眉をひそめた。
「私、その父たちの思惑がたまらなく酷いと思ったんです。
子供のようですけれど、本当に、本当に悲しくて。むくれてしまったんです。
高坂さんにも失礼だとわかっていたんですけど、恥ずかしくて悔しくて。」
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