第5章

7/12
前へ
/88ページ
次へ
映画が終わり窓を開けて確認するまでもなく、部屋の中でも雨音は聞こえている。雨音だけでなく風もかなり強そうだ。 「浩平くーん、先にお風呂使って」 「……へっ」 「へっ、って。止みそうにないし、もう泊まるよね?」 「う、うう、あ、いや、あの、うん」 返事にならない返事に大樹は肩を震わせて笑っている。 「はい、タオル」 手渡されたタオルを握り締め、ヨタヨタと浴室へ向かう。 映画を観ながら少しだけビールを呑んだけど、酔うほどではない。 だけど、足がもつれる。 「あわわ」 浴室の前でついに転けた。 「大丈夫?!あれ、そんな酔ってたっけ?」 驚いた大樹が俺の腕を掴んで起こしてくれた。 「大丈夫、ちょっと足がもつれただけ」 恥ずかしくて下を向いたまま答える。 「そ?気をつけてよ」 優しい声に頷いてそそくさと浴室へ入った。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

406人が本棚に入れています
本棚に追加