てるてるぼーず。

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「てるてるぼーずよ。 まぁ、気休めだけどね」 てるてるぼーずを触りながらミオラは言う。 「この降り注ぐ雨と何か関係があるのか?」 窓から外を見てアリトは尋ねた。 「一か月以上こんな雨が降り続けてるの。 この町は緑が命。 でもこのままふり続けると緑は失われるかもしれない」 振り続ける雨で増水した川。 水が溢れかえる田畑。 そんな状況を見てミオラは危機感を持っていた。 「貴女はこの町を愛してるんだな」 町を心配するミオラを見てアリトは何だか優しい気持ちになっていた。 「当然よ。 あたしのお父さん……町長が命がけで守ってくれた町ですもの。 今度はあたしが守る番よ」 小さな台に置いてあった写真立てをミオラは見つめた。 その写真には大人の男性と女性、そして幼いミオラが写っていた。 「命がけ……?」 ミオラの言葉にアリトは質問を投げかける、 「貴方も野暮な質問する人ね。 あたしの父は魔物の襲撃で命を落とした。 しかもごく最近の話よ」 ブツブツ文句を言いながらもミオラはきちんと答えている。 「可笑しな話だな。 魔物の邪気は一定に保たれてるはず。 町には結界まではってあるのに襲われるなんて……」 腕組みをしてアリトは考え込む。 人が住むところ全てには結界が貼ってあり絶対安全と言われてる。 それなの魔物に襲われた事にアリトは疑問を抱く。
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