賢き愚見の愚犬

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僅かに耳に入った会話は、外回りで後輩がなにやら粗相をした等で、脂汗を首にかけたタオルで拭いつつ怒鳴り散らしていた。鞄を左手に持ち、携帯電話を右肩と頬で挟み、右手でタオルを掴んで顔面や首もとを拭いていた。恰幅の良い腹からして運動はしないようだ。 交通状態が悪いからか車ではなく足を使ったのは、取引先に一分でも早く辿り付き、謝罪する為か。僕の生き方は飼い主曰く、人類の友だ。思うに僕は僕の部分も兼任している。会社の為、家族、生活の為仕事に仕事、やれますやりますやらせてくださいが心情の平社員には同感出来る部分があるだろう。きっとある。 中年男性は課長だろうか。迷惑をかけるな、自分でやれ、従え、自己判断でやれ、責任を取れ、お前どうするんだ。禿げ頭に日光を受け、真っ赤に顔を染めた中年男性と、部下に多幸を祈る。 次に、公園に向かい昼食を飼い主と共にしていたら、ベンチで愚痴を溢す二名の女性社員がいた。少し離れたベンチで、飼い主は僕を撫でながらその横のベンチに腰を下ろした。飼い主とあれこれしていたら愚痴が鼓膜を揺らすのだが、その内容も、なんだか愚痴らしい。 嫌いな上司、調子に乗る同僚、家庭、云々だ。そんなに嫌なら生き方を変えれば良い。偉そうに僕は思うが、もし言えたとしても、出来たら苦労はしないと言いやがる訳だなこれが。出来たらどんなに楽か。暇がない。出来る訳ない。宛がない。様々だ。
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