プロローグ

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ブッという音と同時に、向こうから会話を切られ、女は悔しそうに、髪をかきあげた。 ――結局。 ――結局、そうなのだ。 どんなに嫌だと抗っても……結局はあの男の思う通りに動いてしまう。 ――“蜥蜴” 甘く、優しく。 そう呼ばれる度に……嬉しくて嬉しくて堪らなくて……。 全てを許して、あの男の側に行ってしまうのだ。 ――本当に、どうしようもない女だ。私は……。 自嘲気味に鼻で笑うと、コートを羽織り、ヒールを履き、豪奢な部屋を横切るように闊歩する。
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