森林

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イヴさんが背中に背負っていた刃状の武器を右手に持ちます。 自分の背丈ほどのそれは赤黒く、持つ場所は中央にあり、 弓の形を描いた板と言えばいいのでしょうか…… 随分と物騒ですね。包帯に巻かれていた時はそうでもなかったのですが。 「じゃあ行くわよ、ついてきて」 イヴさんを先頭にして足早にオーガストムーンとの距離を詰めていきます。 「ここ辺りね」 イヴさんが足を止めます。勇者御一行も頷きます。 ひらりと躍り出たイヴさんはそのままオーガストムーンに斬りかかり、 凄まじい攻防を繰り広げます。そう、まるで舞っているかのように…… 「アレフ、綾さんも……見惚れてないで進むわよ」 飛鳥さんが喝を入れます。 私達は体勢を低くしながら脇の草陰を進みます。 「金華炎破」 左側でイヴさんが詠唱を終えて技を発動したようです。 金色の炎はオーガストムーンを後退させるほどです。凄い火力です。 すると横から声がしました。 「……綾さん!!危ない!!」 マーニャさんが飛びついてきました。 私の居たところにオーガストムーンの雷魔法が被弾します。 肝を冷やしますね…… 「ありがとう」 「いいえ~、このぐらい、進も~」 相変わらず反応が軽いですね、マーニャさん。 教わった隠密を使っているのか、飛びつかれるまで解りませんでした。 ……そろそろ道の向こう側ですね。 私はイヴさんの方を見ます。 イヴさんはチラリとこちらを見ると、地獄熱鎖を発動させました。 前回見た時よりも技が強化されている気がします。 鎖の量が増えていますね。 オーガストムーンは鎖で地面にしっかりと固定されました。 イヴさんはひらりと踵を返すと私達の方に走ってきます。 「ホンミョウタイセイのようには倒せないわ、走るわよ」 私達は縛られ荒れ狂うオーガストムーンを尻目に全速力で森を駆け抜けました。
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