3人が本棚に入れています
本棚に追加
イヴさんが背中に背負っていた刃状の武器を右手に持ちます。
自分の背丈ほどのそれは赤黒く、持つ場所は中央にあり、
弓の形を描いた板と言えばいいのでしょうか……
随分と物騒ですね。包帯に巻かれていた時はそうでもなかったのですが。
「じゃあ行くわよ、ついてきて」
イヴさんを先頭にして足早にオーガストムーンとの距離を詰めていきます。
「ここ辺りね」
イヴさんが足を止めます。勇者御一行も頷きます。
ひらりと躍り出たイヴさんはそのままオーガストムーンに斬りかかり、
凄まじい攻防を繰り広げます。そう、まるで舞っているかのように……
「アレフ、綾さんも……見惚れてないで進むわよ」
飛鳥さんが喝を入れます。
私達は体勢を低くしながら脇の草陰を進みます。
「金華炎破」
左側でイヴさんが詠唱を終えて技を発動したようです。
金色の炎はオーガストムーンを後退させるほどです。凄い火力です。
すると横から声がしました。
「……綾さん!!危ない!!」
マーニャさんが飛びついてきました。
私の居たところにオーガストムーンの雷魔法が被弾します。
肝を冷やしますね……
「ありがとう」
「いいえ~、このぐらい、進も~」
相変わらず反応が軽いですね、マーニャさん。
教わった隠密を使っているのか、飛びつかれるまで解りませんでした。
……そろそろ道の向こう側ですね。
私はイヴさんの方を見ます。
イヴさんはチラリとこちらを見ると、地獄熱鎖を発動させました。
前回見た時よりも技が強化されている気がします。
鎖の量が増えていますね。
オーガストムーンは鎖で地面にしっかりと固定されました。
イヴさんはひらりと踵を返すと私達の方に走ってきます。
「ホンミョウタイセイのようには倒せないわ、走るわよ」
私達は縛られ荒れ狂うオーガストムーンを尻目に全速力で森を駆け抜けました。
最初のコメントを投稿しよう!