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風のように消えてしまった紫織さんを見失うと
受付にいた沙羅さんが話しかけてきました。
「彼、あなたのために待っていてくれたのよ~、
患者を診たなら本人の具合を一応聞かないと、だってさ、
ほんと、変な所しっかりしてるんだから、」
沙羅さんは、彼をからかっているような顔というか、どこか懐かしむというか、
でも少し悲しそうな顔というか、
そんな顔をしているものだから私は少し反応に困りながら
「そうだったんですか、わざわざ申し訳ないです、」
そう言うしかなかった。そしたら沙羅さんは、
「そんなこと全然ないわよ~、あなたもギルメンでしょ~、
そういうところはしっかり甘えればいいのよ、」
沙羅さんはにっこりと微笑むと料理の準備を再開しだしました。
私は近くの席に腰を下ろすと、
周りがやけに「がらん」としていることに気づき彼女に尋ねました。
「今日はやけに人が少ないですね、なにかあったのですか?」
そしたら彼女は準備を続けながら、
「今、皆出払っているのよ~、
今回あなたは毒鳥を討伐しにいったでしょ~?
その時に討伐は成功したのだけれども、死骸がどうも変らしくてね、
山の様子を詳しく調査してくれっていう依頼を代表自らがだしたのよ、
それを用事のないギルメン全員が受けてね、今、山を掃除中よ~、」
沙羅さんはなんてこともないような声音でしたが、
流し台からちらりと見えた顔は少し険しい風に見えました。
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