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朝一番の酒が沁みる。
なんで朝一番で飲んでいるのだろう、私、こんなダメな人間でしたっけ。
いや、朝一番で飲んでいるからダメな人間なわけでは必ずしもないですけども。
でも、いや……
「よ~し、じゃあ行くべ~、山掃除~、」
紫織さんが号令をかける、え?今からですか?
「ちょ……え?待って……」
皆さん酔っているのに勇ましい。
昇り切った朝日を背に山に続く方の裏口に皆さん向かっていきます。
私も置いて行かれそうになりながらふらつく足でがんばってついていきました。
「あやや~、だめだめじゃ~ん、酒に弱いのにそんなに飲んじゃ~」
「いや、私もこんなに酔うなんて……」
お恥ずかしいことに紫織さんに指摘を受けながら歩いていたら、
ずいぶんと一団から離れてしましました。
横でゆっくり歩いてくれている紫織さんに申し訳が立ちません。
私は気力を振り絞り辺りに気を配りました。そうしたら……
「……あれは何でしょう?」
「ん~、どれどれ……」
「あれです、あれ、」
昇った太陽は真後ろ、正面から30度右の山の斜面、それは確かにありました。
「遺跡ですかね?」
「……ん、あれが見えるか~、」
少し紫織さんの声音が変わった気がしました。
と思ったらまじまじと私の方を見てきたので私はぎょっとしてしまいました。
「な、なんですか」
「ん~、イヴが嗅いだ事の無い匂いだと言っていたが、
やっぱり血は継いでいるようだね~。そうだ、あやや、両親は健在かい?」
「いえ、亡くなっています、二人とも」
その時の紫織さんの一瞬だけ見せた苦悶の表情を
私はこの先、忘れることはないでしょう。
「そうか~、辛いことを聞いたな、すまんな」
どうしてそんなことを聞くのかわからないまま
紫織さんはもう話すことはないかのように振る舞い、
結局聞けずじまいでした。
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