激動の明々後日

9/11

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
私は少し小走りに彼女に近寄り、 「ど……どうも」と声をかけましたが返事がありません。 「ジー……」っとこちらを見てきますが…… 耳当てみたいな物をしていて聴こえないのでしょうか? そう思ってもう一度大きめの声で声をかけようとした時、 ボソッと何か言ったように思えます。なんて言ったのでしょう? 「よろしくだとよ」 後ろから歩いてきた紫織さんが代弁しました。 「あ……これからよろしくお願いします」 私がそう言うと彼女は一瞥し、紫織さんの方に近づき何か話し始めました。 「あ~、もうこの先でそんなに酷いのか、わざわざすまんな、 すぐに行く、そう前に伝えて、」 そう彼が言うと、背中に背負っていたギターと思われるものを前に回し、 適当に一弦弾きました。これだけで前に伝わったのでしょうか? そう思っていると紫織さんが、 「鐘冴ちゃんがわざわざこっちに来たのは あややにあいさつしたかったからだと思うぜ、良かったな、モテモテじゃん」 紫織さんが適当にそんなことを言うものだから、 私は一瞬「モテる」という言葉を履き違えかけてしまいそうでしたが、 彼が言いたいのはギルド員に良い風に興味を持たれている。 別段、恋愛的な好き嫌いではなく、 好かれているということなのだと思いました。 私は「鐘冴(さゆ)ちゃん」と呼ばれたその女の子の方を見ると、 恥ずかしがっているのか顔を俯けていました。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加