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私は少し小走りに彼女に近寄り、
「ど……どうも」と声をかけましたが返事がありません。
「ジー……」っとこちらを見てきますが……
耳当てみたいな物をしていて聴こえないのでしょうか?
そう思ってもう一度大きめの声で声をかけようとした時、
ボソッと何か言ったように思えます。なんて言ったのでしょう?
「よろしくだとよ」
後ろから歩いてきた紫織さんが代弁しました。
「あ……これからよろしくお願いします」
私がそう言うと彼女は一瞥し、紫織さんの方に近づき何か話し始めました。
「あ~、もうこの先でそんなに酷いのか、わざわざすまんな、
すぐに行く、そう前に伝えて、」
そう彼が言うと、背中に背負っていたギターと思われるものを前に回し、
適当に一弦弾きました。これだけで前に伝わったのでしょうか?
そう思っていると紫織さんが、
「鐘冴ちゃんがわざわざこっちに来たのは
あややにあいさつしたかったからだと思うぜ、良かったな、モテモテじゃん」
紫織さんが適当にそんなことを言うものだから、
私は一瞬「モテる」という言葉を履き違えかけてしまいそうでしたが、
彼が言いたいのはギルド員に良い風に興味を持たれている。
別段、恋愛的な好き嫌いではなく、
好かれているということなのだと思いました。
私は「鐘冴(さゆ)ちゃん」と呼ばれたその女の子の方を見ると、
恥ずかしがっているのか顔を俯けていました。
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