旅路

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山を降り、城下町の端を抜け、 共和国本城には向かわず、東に進路をとります。 この道は山脈沿いに真王国に向かう道です。 私はイヴさんがどこに向かっているのか気になっていたので このまま真王国に向かうのかと問うと、 「そうよ」とだけ帰ってきました。 なぜ向かうのかと聞いても答えてくれません。 私は考えを巡らせながら歩くしかありませんでした。 「今日はここに泊まりましょう」 城下町の端から2つほど村を越えた比較的大きめの村で一泊するようです。 もう夜ですからね。 泊まるのはわかるんですけども、なぜこんなにもボロ屋なのでしょうか? もう少し良い宿がこの村にはあると思うのですが…… 「こんな宿に泊まるなんて本当に追われてるみたいですね。 良い宿だと目立つという理由で泊まっているみたいです」 そう言うとイヴさんがさらっとこんなことを言います。 「私達、追われているのよ」 「え?」 どうやら追われているようです。 さっきからそんな気はしていましたが……でも何ででしょう? 「自分が何者かも解っていないのね…… あなたが知らないということは銀桜華に聞いていたけれど、 やっぱり愚かなものね…… 自分を知らないせいで己の身を守れないこともあるというのに…… ……さっき隠れなければあなたは捕まっていたようにね。 ……もっとも全人類が何者かと問われた時、 本当の答えが解る者はごく限られているでしょうけどね」 そんなことを言いイヴさんは黙ってしまいました。 なんだか大層な話です。 それにしても私は何なのでしょう。この世界、色々な人種がいますが…… 例えばエルフとか、魔族とか、龍族とか…… 私が人間族でないのだとするならばいったい何と言うのでしょう? 「こんな所で立ち話も良くないわ、入りましょう」 そうイヴさんが言うので、 初夏の夕方に吹く少し寒い風に当てられて震えた体を 素早く宿に引っこめたのでした。
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