愁い

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「綾、背中を流してくれるかしら?」 私がイヴさんの隣で身体を洗っていると 彼女はそう言ってきます。 私は布をとると石鹸岩をつけて背中を擦ります。 つやつやした金髪はよく手入れされていて 自分の身体への誇りが窺えます。 私は髪を痛めないように避けながら 丁寧に背中を流すと、イヴさんは目を細め 「あなたに流してもらう日がくるとはね、 私はこのまま死んでしまっても……かまわないわ」 一筋の涙が頬を描きます。 橙に染まる空と射す日が彼女の何もかもを耀かせました。 その姿は余りにも小さく、美しく、儚く、偉大で、暖かく、優しく、悲しく…… 私はいきなりのことで戸惑うしかありませんでしたが、 その中でも絞り出した声は自分でも驚くような泣くような声で…… 「な、何を言うのですか……私、あなたに対して何もしたことがありません。 あなたに初めて合ったのもつい先日です……だから……あの…… ほら、泣かないでくださいよ。涙を拭いて…… ……私まで泣けてきちゃうじゃないですか…………」 私は訳がわからないまま、拙い言葉でそんなイヴさんを慰めたのでした。
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