小雨

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私達が食事をし終え、 雪さんのいる部屋に容体を見に入ると、 ちょうど目を覚ました所でした。 きょとんと自分の手のひらを見つめています。 「具合はどうかしら、雪」 イヴさんが聞きます。雪はこちらを見ると 「……生きてる…………私……死んだかと…………」 涙を流しだしました。そんな雪さんをイヴさんが抱擁しました。 雪さんはガタガタ震え、すでに青い顔をさらに蒼白にします。 「ご……ごめんな、雪、俺が……」 アレフさんもこの震え様にはビビり、素直に謝っています。 飛鳥さんは心配そうな顔をし、 マーニャさんは俯いたまま動きません。 イヴさんは少し落ち着いてきた雪さんに、 覚えている状況を聞き出しています。 「……歩いていて……脱衣場に戻ろうとしたら…… 大きい腕にいきなり掴まれて……それで…… その猿に木棘玉も水虎玉も打ち込んだのに怯まなくって……それで……」 一つずつ状況を思い出していきます。 「殺されるって思った時……そう……視界の端に人影が……」 悪寒が走ったのか吐き気を催し、横に置いてあった桶に嘔吐しました。 イヴさんは彼女の背中をさすりながら何か考えているようです。 「その人影は私達かしら?」 「……違うように……思います」 その答えに顔を険しくし、考えられる可能性を探り出しているように思えます。 イヴさんは立ち上がると飛鳥さんに背中を擦ることを代わってもらい、 廊下に出て行きました。 私はそんなイヴさんについて部屋を出ると、 足早に宿屋を出るイヴさんの後ろ姿が見えました。 私は雨の中、あえて目立つ和傘をささずについていきました。
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