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「いい?今見た人の顔をよく憶えておきなさい。
あの男は間違いなくあなたの敵よ……見かけたら逃げなさい、いいわね?」
イヴさんは真剣に私の顔を見ます。
私は曖昧に頷くと、イヴさんは
「……あなたを出来る限り守るわ、
銀桜華とも約束したもの、必ず真王国へ送り届けると」
強い決意が感じられます。
私が何故だか共和国に狙われる身だということが薄々実感しました。
「……いつから気づいていたのですか?
ホンミョウタイセイがあの……柊という男に操られていたということを……
それに、あの男は何者ですか?」
イヴさんは少し困ったような顔をしましたが答えました。
「……左回転であなたに四発目のパンチを食らわしに飛んだ姿を見た時よ。
あなたも計算していたようだったし……
普通、あそこではあなたを目で追って右回転で動くはずだわ。
とても違和感があったの……そして雪の人影の話、
もしや柊か……うん……その男が来ていると思ったのよ」
イヴさんは口ごもり、それ以上話してくれません。
私が催促すると、
「あなたは……まだ知るべきではないわ……
自分で気づいた方がいいのかもしれない、あなたの宿命も」
そう俯きながら宿の方に歩いて行ってしまいました。
なんとも不完全燃焼な気分のまま、
行きには気づかなかった雨の冷たさが体に染み込んだのでした。
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