三流小説家。

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フリーマーケットは、一昔前まで、蚤の市と呼ばれていたらしい。語源は古着や中古の販売する市場から汚いイメージや、どこからともなく沸いてでくる蚤から来ているらしいけれど、語源は定かではないらしい。とあまり役に立たない豆知識を思い返しながら、フリーマーケットの会場に来ていた。近場ということもあったし、気分転換の息抜きとして来たけれど、天気も晴天ということや、休日ということもあり賑わっていた。親子連れや、学生、お年寄りの集団の合間を縫って歩きながら、ある出店に目がついた。 五千円と、書かれた札を持った女の子がシートに腰掛けていた、髪の毛はボーボー伸びて身なりは正直、清潔とはいえない。いや、もっとも注目すべには商品を置くべき場所に女の子が座ってること、そして、それ以外には定員は見当たらない。遠巻きにチラチラと視線が集まっているが、障らぬ神に祟りなしとは言うか、トラブルには遠慮ということで避けられいた。私もその中に混じって通行人の一人に混じりたいけれど、その子はジーッと視線を釘付けにして離れられない。 「お姉さん。最近、不幸だったりします?」 「え? ふ、不幸?」 「はい。不幸ですね。そんな香りがします」 「それって出任せでしょ? 相手にいきなり不幸ですねなんて、言いがかりをつけて騙すって手法」 確か、コールドリーディングと言ったかなとうろ覚えの知識を思い返したが、目の前に座る女の子は深々とため息をついた。 「この私が嘘をついてるように見えるんですか? こんなにキラキラした瞳をしてるのに、こんなに純真無垢な子はどこにも居ませんよ?」 「自分のことをそう言ってる時点で充分に怪しいと思うけど?」 「なら、こんなに不幸そうな子はいませんよ?」 まぁ、確かに、ビニールシートに座って五千円の値札を持って座っているとなれば、それなりの事情を抱えていそうだ。 「だったら、警察にでも行く? 一緒に連れて行ってあげてもいいけど」 確か、ここの近くに交番があったはずだ。迷子なら両親が探しているかもしれない。悪戯なら今すぐやめさせられるかもしれない。 「あ、いえ、警察は…………」 と、女の子が言いよどんだ時だった。 「ちょっとよろしいですか?」 と、振り返った時、背後には四十くらいの中年のおじさんが佇んでいた。右肩には腕章を巻いていた。どうやら、フリーマーケットの係員らしい。
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