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女の子が、はーいと元気だけでまったく反省してない返事を返してきた。無邪気にニコッと笑いつつ、
「お姉ちゃんはどんな、お仕事してるの?」
と、聞いてくる。想定していたとはいえ、聞かれるとなかなか答えにくい職業なのだけれど、ここで口ごもれば女の子は私のことをニートだか、無職の女と認識するだろう。できれば、あまり話したくはない答えなくちゃいけないのだろう。でも、やっぱり恥ずかしい。
「しょ、小説家…………だよ」
それも、売れない三流小説家だ。数年前に偶然、賞を取ったがそれだけだった、それ以来、何冊が本を出版したが売り上げは芳しくなく、ここ最近はそっちよりも、アルバイトのほうが本業になりつつある。賞をとった時期はそれはうかれたがすぐに現実というやつと直面した。小説家というやつは、面白い本を書ければいいというわけではなく、それをより多くの読者に知ってもらわなければならないのだ。
「ふえー、小説家さんなんだー、じゃじゃあ、本を書くの?」
「そうよ。まぁ、書ければいいってもんじゃないけどね」
そこらへんのこまごまとした事情を語るつもりはない、愚痴っぽくて嫌だったからだ。書けるだけではだめ、それを多く知ってもらわなければ意味はなく、当然、知ってもらわなければ生活はできない。
小説家という職業は楽だと思うかもしれないけれど、ちっともそんなことはない。辛いし、大変な職業だ。特にネタが出ない時は半端じゃない、書かなければいけない、でも、書けないというジレンマは相当なストレスになってしまうからだ。もう、叫び回りたいくらい。
「ふーん。お姉ちゃんも大変なんだね」
「あんまり、興味ないでしょ」
「んーん、そんなことないよ。お姉ちゃん、大変なんだなって思うし、大変だなぁって…………思うよ」
それだけかぁと私は苦笑いしたが、それでよかった。別に気にしていないし、こんなに小さな女の子に同情されたら逆に凹むから、
「まぁ、最近は好きなように書けないことが多いから、大人になったらとか、子供に悪影響みたいな圧力がすごいの」
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