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よくわからなかったのか、女の子がん? と、小首を傾げた。まぁ、そうだろう。賞に入賞する依然、携帯の小説投稿サイトなんかでもあった。自分の好きなように書いたのに、強制非公開という処置で公開できなかったのだ。私の書いたことが非常識であったことは確かだったけれど、一度、書いた文章をもう一度、書き直す作業は苦痛でしかなかった。誤字脱字、誤用の修正なんかじゃない、一生懸命、ひねり出した文章を全て消す、または一部を訂正していく、これは私は苦手だ。
なら、原稿用紙に書けばいいと言うが、そうなった場合はなかなか読んでくれる相手がいない。こちらは私が読まれるのは恥ずかしいということもあるが、自分の夢を真っ向から否定されるのが怖かったりする。
自分の思い通りに、好き勝手に書くというのは、言葉にするのは簡単だけれど、実行するのは難しい。
それは小説家になってからも変わらなかった、いや、よりいっそうにひどくなったと言うべきなのかもしれない。面白く、大勢の人間が受け入れる小説というのは書くのは困難、いや、不可能と言うべきかもしれない。
「お姉ちゃん?」
と、訝しげに私の顔を覗き込んできた。ああ、また、悪癖だ。脳内で一人で勝手に思考を進めてしまう、これはなかなか直らない。
「んーん、なんでもないよ。ごめんね。よくわかんないこと言って」
「そんなことないよ。お姉ちゃんって私のことを子供扱いしないもん。確かによくわかんなかったけど…………」
と女の子が、苦笑する。素直だなぁー。
「ね、お姉ちゃんはどういうお話、書いてるの?」
ここで、君が読むような物じゃないよと言うのは簡単だ。でも、それはしなかった、それは子供扱いすることだから、
「んーっとね、人が死んじゃうお話かな」
嘘を吐くこともできたが、適当にごまかすなんてできない。自分の夢、書きたいことに嘘を吐きたくはない。
「人の死んじゃうお話……」
「はは、怖いよね。でも、私はこういう物語が書きたいんだよ。人の感性とか、価値みたいなことをって、やっぱり難しいかな」
どうして、人を殺したくなるのか。どうして、他人の肉体の一部を奪いたくなるのか。どうして、人を殺してまで自分の願望を叶えたくなるのか。自分の中にある衝動を書き写してしまいたくなるのだ
異常だと蔑まれるかもしれない、異端だと避けられるかもしれない。でも書きたいのだ。
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