三流小説家。

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男の寝室にそっと入る、子供の姿はない、まぁ、この鼾では隣で寝たくもないだろう。そうとうにうるさい。安堵している場合ではない、私はそっと男に近寄り、一閃、男の鼾が一瞬、止まり、掛け布団がじわっと鮮血に染まっていく。心臓に一突き、文句なしに絶命だ。これを習得するまでどれだけの人数を犠牲にしたかわからない。とうぜん、それに伴い殺してきたというわけだが、ナイフを引き抜くことはせずそのままにする、これは一種の合図だからだ、この男の心臓に刺さっているのは私が殺すために使ったナイフであり、男に対してのせめてもの墓標の代わりだ。 人は金がなければ生きられない、そのため働かなければいけないが、世の中なかなか上手くいかないものだ。 「本業は小説家なんだけどなぁ」 仕事中だということに、私語が漏れた、まぁ、これが小説執筆のエネルギーになっているわけで、あながちバカにはできない。そう、その一瞬が隙になった。 「お姉ちゃん?」 昼間、出会った女の子がそこにいたからだ。暗闇でわからないだろうと安心することはできない、私はとっさに男の心臓に突き立てたナイフを引き抜き、女の子に迫る、え? と、一瞬、恐怖に顔が竦む。殺さないとでも思っていたのかもしれないけれど、それは幻想だ。 女の子の頬にナイフを刺す、あっさりと頬が切れ鮮血が飛び散った。女の子が悲鳴をあげるが髪の毛をつかみ、壁に叩きつける、涙と鼻水、それと血でぐちゃぐちゃになった顔がそこにあった。瞳が告げる、どうして ? なんで、こんなことするの? と、その答えは簡単だ。 「私が小説家だから」 とだけ、答える、うえっ……? 女の子が呻き声をもらすが構わず足払い、そのまま地面に転がす、傷口をもろに叩きつけたのか女の子の悲鳴が響く、ごめんね、もう少しで終わるから 片膝を女の子の背中に押しつけ自由を奪う、悲鳴をあげないようにもう一度、床に叩きつけた。女の子がヒックヒックと嗚咽をもらすがもう抵抗の意志を削ぐことはできたらしい、自由の両手がばたつくことはなかった、もしかしたら、死んだふりでもしたかったのかもしれないが、そんなんではごまかせない。ナイフを高々と振り上げて女の子の心臓、めがけて一気に振り下ろした。 カッ!? と、声がしたが、すぐに終わり真っ赤な血の池を作っていく。終わった。 と、一息つくひまもない、私は女の子からナイフを引き抜く。
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