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着地したのは階段脇の傾斜部分だった。 人一人が歩ける幅程度の坂に着地して、その衝撃で尻が浮いてサドルに二、三度バウンドした。 だけど、そこからスピードに乗った自転車がさらに勢いを増していく。 慌ててブレーキをかけると耳障りな甲高い音を立てて自転車のスピードが落ちていき、俺は足を地面についてさらに減速させる。 数秒後、下り終える一歩手前でようやく自転車が停止した。 .......マジで一瞬死ぬかと思った。 咄嗟にハンドルを切らなかったら階段の上に落ちていて、下手したら大転倒していたかもしれない。 ドッドッと心臓が早鐘を打つ中、後ろに乗った斎藤に急いで振り返る。 「大丈夫か!?」 振り向くと一番に斎藤の頭頂部が見えた。 顔が見えないくらい俺にくっついて、腹に回った細い腕がぎゅうっと抱きついてくる。 それから背中に当たっている柔らかな感触とふわりと香るいい匂い。 う、わ! それだけで俺の身体は素直に反応して、鼓動がさっきとは違う意味で加速していく。 「もう、や.......こわい」 背中に顔を埋めたせいでくぐもった声。 半分泣き声で呟く彼女に俺は我に返った。 欲情している場合ではない。 「ご、ごめん!怪我とかしてない......」 慌てて訊きかけて言葉が詰まる。 先ほどの衝撃で斎藤のスカートの裾が少し捲れ上がっていて、膝に歪に走る傷跡が露わになっていた。 彼女の白い肌に似合わない痛々しい痕が膝を縦に裂くように浮き上がっている。 ちょうど顔を上げた斎藤が俺の視線の先に気づいた瞬間、目にも止まらぬ速さでスカートの裾を元に戻した。 さっと自転車の後部座席から降りる。
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