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「志帆さん、笑ったほうがいいです。すごく可愛い!」
「そうかしら?」
「はい、もっと笑ってみたら友達もたくさんできますよ!」
「そうね。笑おうとしてるんだけど、使ってこなかった筋肉だからか不気味になるみたいで、見た人たちの笑顔も引き攣るの。あと、私の予言が当たるから怖いのが強いみたい。占い師にはみんな相談するのにね」
志帆さんは無表情に戻り、さらにしょぼんとして湯船に浮かぶ花びらを突く。
い、いけない。
あの笑顔を見ればみんな怖がらないと思って言ったのが、落ち込ませてどうする。
「志帆さんには私がいます!」
「ありがとう」
私一人なんてどうってことないのに、志帆さんはまた嬉しそうに笑う。
それだけで私にも価値があるような気がしてくるから、逆にお礼が言いたくなった。
二人で狭いバスタブに縮こまって小さく笑い合う。
私もこういう女だけの密会は久しぶりで楽しい。最初の困惑は既に消え失せていた。
「唯ちゃんが元気になってよかった。話は蓮からまめに聞いていたの。あの人几帳面ね。仕事ができるはずだわ」
蓮さんの話題が出て、自分でも笑みが引っ込んだのがわかった。
それが志帆さんが見落とすわけもなく、彼女はわずかに空いていたスペースを静かに詰めてきた。
「さて、唯ちゃん。裸の付き合いにもなったからには隠し事はなしでいきましょう」
「は、はい」
「とりあえず、そうね。宗介と蓮、どちらの話から聞きたい?」
いきなり確信すぎる。
逃げるように視線を横に逸らすと、彼女の顔が追いかけてきてまた視界を支配した。
「あなたの心を支配しているのはこの二つでしょう?」
「そ、そうですけど」
「どうせなら思っていることをすべて吐き出したほうがいいわ。ねぇどっちから聞きたい?」
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