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太陽が天高く輝く時間帯、私は都内の高級住宅街にいた。
洋風、和風、統一感のない多様な邸宅が立ち並ぶけど、どれも共通して大きな門構えで、タクシーの中からそれらの風景が流れていくのを眺める。
そのうち、ひときわ背の高いベージュの壁が現れて、タクシーがゆっくりと止まった。
私は料金を支払って礼を言うと、熱いアスファルトの上に降りる。
『花山』と表札が掲げられた門を見上げる。
暑さのせいではなく、鼓動が早くなる。
一度深呼吸をしてから、インターホンを押した。
すると、隣の扉のロックが外れる音がした。
「どうぞ、入って」
カメラのマイクから涼やかな女性の声が聞こえる。
私はカメラに一礼すると、黒い鉄格子の扉を開けた。
一歩足を踏み入れたら、そこは草木が豊かに生えていた。
手入れがちゃんとされている。さっきのホテルのような造形美ではなくて、自然と植物が共生するように整えられた庭だった。
石畳を歩いていくと、白い洋館が現れる。
淡い水色のロングワンピースを纏った華奢な女性が、玄関前に立っていた。
「会長」
「暑い中、わざわざ来てもらってごめんなさいね」
歩み寄る私に会長は微笑んだ。黒髪を緩く結い上げていて、会社で見る時よりも私服姿は柔和な雰囲気。
ただ、夏空の下だと余計にその肌の白さが際立って、血の通っていない美しい人形のようだ。
「いえ、こちらこそ急に……」
「いいの。朱里に会社を任せて療養してるけど、実は退屈なのよ。だから、お客様は大歓迎。どうぞ気兼ねなくしてちょうだい」
会長は重そうな扉を開いて、家の中へと私を招き入れた。
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