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佐野は高校の同級生で一年生の時からずっと同じクラスだった。
斎藤と佐野。
同じサ行から始まる名字ということで出席番号が近く、新学期では必ず席が隣か斜め前後。
日直は嫌というほど一緒にやった。
そんな佐野と私の間に何か確執や憎悪を生むような大きな事件があったわけではない。
そう、何もない。何もないのに奴は私だけにきつい態度をとった。
私が鈍くさくてイライラするのか、性格が合わないのか。
原因は不明だが、他の女子には普通なのに私にだけ辛辣な言葉を飛ばすのだから、敬遠したくなるのも自然な流れだ。
それなのに、出席番号が近いせいで行事の時は意思に反して関わることになる。
何度、斎藤という名字を呪ったことか。
いや、そもそも、なぜここに佐野がいるのかが問題だ。
も、もしかして、隣とか?
いやいや、そんなこと!そっくりさんじゃないの?
突然現れた佐野らしき人物に混乱していると、腕の中の子猫が暴れだした。
私の腕を潜り抜けて玄関脇の棚に飛び乗る。
その拍子に何かが落ちた。
ゲームが入った箱。
昼間、大家さんと話す前にそこに置いたままになっていた。
玄関の私と佐野の間に落ちた王子たちがズラッと並んだドリーミーな表紙に目玉が飛び出そうになる。
今このタイミングでありえない!
などと頭で考えるより先に、それら拾って後ろ手に隠した。
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