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佐野はソファにいなかった。どこだと探すと浴室横の脱衣所、洗面台の前で俯いている。 「は、吐きそう!?」 「いや、コンタクト取っただけ……」 佐野が目を瞬かせて鏡越しにこちらを見遣る。ほっとしかけたけど、こうしている場合ではない。私は部屋に戻った佐野に体温計を渡した。 「ひとまず熱計ってみよ。あと、着替えとか。あ、身体拭く?」 「いや、朝シャワー浴びたからいい。着替えはクローゼットの中の棚に適当にジャージとかが入ってる」 「わかった」 彼をベッドに座らせて私はクローゼットの中、下段に設置された棚から長袖の厚手のシャツとジャージの上下を取り出した。下着はどうしようかと思いつつ、適当に選んで持っていくと、すごく微妙な顔をされた。 やはりここは恥じらって下着は触れないべきだったのか。 仕事上、下着を売っているから男性ものでもさほど抵抗はない。父や兄に幼い頃からパンツ一丁で家の中をうろうろされていたからというのもある。 男に免疫がないのに、こういうところは慣れているから自分でもちぐはぐだと思う。
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