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その他の食材と日用品もカゴに入れて、会計を済ませた。病院に戻ると佐野はちょうど診察中だったみたいで待合にいなかった。
買い物袋を抱えた私が座ったら邪魔になりそうだと思って外に出ていようとしたら、診察室のドアが開いた。
マスクをつけながら出てきた佐野も私を見つけて軽く手を挙げる。
「どう?」
「ただの風邪。ちゃんと食べて寝てたら問題ないって」
「佐野さーん」
診察室近くにある受付から呼ばれた。
佐野は領収書を見て代金を払うと、院外処方のため近くの薬局を案内される。
全て説明を終わったところで、受付の中年の女性は隣に立つ私をちらりと見てふふふと笑った。
「可愛い奥さんに移さないようにね!」
「おっ!?」
奥さん!?
あまりのことで口が開いたまま固まってしまう。佐野はというと適当に会釈で受け流して、私の背を押して外に出る。
奥さん、奥さん……。
外に出ても私はさっきの言葉が頭を占めていた。
そりゃ妙齢の女が付き添いで病院に来ていたらそう思うかもしれないけど。
佐野と夫婦に見られるなんて、私のような普通すぎる……はっ、むしろ所帯染みているから妻に間違えられ……。
「おい」
「わっ!?」
気づけば佐野のドアップが目の前にあって思わず飛びずさる。
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