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洗濯機を回している間に時計はもう十二時を過ぎていた。キッチンを借りて昼ご飯の用意をする。
用意といってもうどんを茹でてつゆを温めるだけ。それだけでは味気ないから葱を多めに切っていれて卵を落とした。
あと、デザートにチーズケーキ。スーパーのものだけど前に食べたら意外とおいしかった。
夏月くんの話だと佐野はチーズケーキが好きなはず。
何となく思い出して買ったはいいけど、病み上がりにきついかなと考えていたら入浴を終えた佐野がキッチンにやってきた。
私の傍らに立ってじっと昼ご飯を見るからどぎまぎしてしまう。
「な、何か?」
「いや、至れり尽くせりだな、と」
「だ、だって私のせいで風邪引いたようなものだから!」
「そういうわけでもねぇけど」
「そうなの!ってまだ髪半乾きだよ!ちゃんと乾かしてきて」
妙に照れてしまって、誤魔化すように佐野を洗面所のほうに押し戻す。
ドライヤーで乾かす音を背後で聞きながら、私は昼食の用意を再開した。
何だか、妙にどぎまぎしてしまう。
私は義務みたいな気持ちでやっているはずなのに、どうしてか佐野にそこを突っ込まれたくなくて誤魔化してしまう。
何か疚しいことを隠している時のように。
見破られたくない。
……何を?
はてと自分でも首を傾げかけた時、佐野が戻ってきたから慌てて今までの思考を場外へと飛ばした。
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