4004人が本棚に入れています
本棚に追加
そう思ってベランダから部屋に入ると佐野がコントローラーを差し出してくる。
「対戦しようぜ」
「へ?」
「暇だし、いいだろ」
言われるがままコントローラーを持ってベッド前に腰を下ろす。佐野はベッドの上、私の背後に座る。
「頭小さい」
「ひゃっ!」
後頭部を掴まれる。いきなりの男の指の感覚に肩が跳ね上がった。
「バレーボールより小さいんじゃねぇの?」
「な、何をっ」
あわあわと手で佐野の指を外そうともがく。
でも、なかなか離れなくて私は無理矢理首を後ろに捻ると、思いのほか佐野の顔が近くにあって「ぎゃっ!?」と奇声を上げてしまった。
その声で佐野が指を離したから急いで顔を背ける。
「か、髪くしゃくしゃになるからやめてよね」
と言い訳がましく言って髪を直す仕草で熱を持った頬も隠す。
いきなり何をするんだ、この男は。
熱が出ると子供っぽくなるというやつなのか。
「や、やっぱり、寝てなくていいの?」
「眠くないし。食べてすぐ寝たら逆に体に悪いだろ」
「そ、そっか」
「小学生の頃とか風邪で休んで家でゲームしてた時の背徳感の中の優越感っていうの?あれ、最高だったよなー。母親に怒られたけど」
「う、うん」
佐野は至って普通に話しかけてくる。でも、私は背後にいる佐野の存在にそわそわしてどうにもゲームに集中できなくて見事全敗した。
そうしてゲームをして一時間が経った頃、佐野の瞼がうつらうつらと下がりかけた。
薬が効いてきたせいかもしれない。私はコントローラーを置くと後ろの佐野に向き合った。
最初のコメントを投稿しよう!