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だけど、よかったのかな?
佐野が怒ってくれたことは嬉しい。
嬉しいけど、そんなことをしていいのかと混乱してくる。
だって、穏便に戸坂真央を諦めさせるために私が必要だったわけで、これじゃあ余計に拗れるだけだ。
むしろ、事態は最悪な方向に向かってもおかしくないのに。幸い、戸坂さんが怒っているというふうでもなく、単純に佐野に自分の行いを詫びたいだけみたいだ。
「私は佐野さんのことが好きなの。私の理想そのものなの」
唐突に告げられて反応に困る。
ストレートに告白されると自分がそう言われたようでドギマギする。
い、いや、そういうのは、本人に言うべきじゃないのか。あ、でも今、私は佐野の彼女だから、先に断っておこうという……って宣戦布告ってこと!?
「ねぇ、あなたはどうしても佐野さんじゃないと駄目なの?」
仕舞いには詰められて言葉が出ない。
だって、私は本当の彼女じゃない。こういう場合どういう返答が最善なのか。あまり刺激したら佐野に皺寄せが……。
「私、どうしても彼が好きなの。私があげられるものなら何でもあげるから。だから、佐野さんをちょうだい」
色々と頭をフル回転させていたのが瞬時に停止する。
何?
彼女が放った言葉を一度頭で咀嚼すると、なんだか脳内がぶわっと熱くなった。
「すみません、いりません」
怒気を滲ませた声でそう答えていた。
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