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「佐野があなたの理想どおりで、あなたが佐野のことを好きなのはわかります。だけど、それを私が『はい、どうぞ』というのもおかしい話だと思います。だって、佐野は物じゃないから。そんな人に佐野を任せることはできません!」 あまりにふざけた提案に怒りのままはっきり言った。 言った後に後悔した。 戸坂真央が半泣きの顔をして走り去る背中を見て自分がしたことの大きさに気づいた。 これで佐野が会社で理不尽な扱いを受けるかもしれないのだ。 追いかけて訂正すべきなのかと迷うけど、間違ったことは言っていないし、今から何を言い訳したらいいのかと右往左往。 結局、すごすごと佐野の部屋に戻ることにした。 ああ、佐野。これで左遷されたらごめんなさい。 肩を落とし、起きたら彼に説明しようと回れ右をしたところでビクッと身体が跳ねた。 玄関が少し開いていて、その向こうに佐野が立っていた。 「き、聞いてた?」 「うん。お前が玄関出ていったあたりから起きてたし。あー、笑うのこらえてて疲れた。お前は俺のおかんか」 ククッと思い出し笑いをする佐野。全然慌てる素振りも怒る様子もなく、むしろ余裕が滲み出ている。 あ、あれ?どういうこと? 佐野の反応に理解できずにいると、彼はベッドのほうに戻っていくから慌てて部屋の中に入った。
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