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「と、戸坂さん、仕事の帰りみたいだった」 「あっそ。あのバカ女、家まで来るとはな。相当絞ったのが効いたみたいだな」 「絞ったって、そんなことしていいの?」 「だって、お前がいびられて俺が何もしないわけにもいかねぇだろ。二度とすんなって言ってやった」 「そんなことを!?」 「お前も今似たようなこと言ったけど。てか、最後全部『佐野』になってたぞ」 「うっ」 そういえばそうだ。全然、頭からすっ飛んでて忘れていた。 言葉に詰まる私をよそに佐野はベッドに入って布団を被る。それから頭の下で手を組んで天井を仰いだ。 「まぁ、いずれは俺がはっきり言わないといけなかったしな。お前は悪くない」 「で、でも、会社で肩身狭くなったり……」 「あいつの親父にあることないことチクられてどっかに飛ばされるか最悪クビもあるかもなぁ」 「そ、そ、そんなっ」 「そうなったら会社辞めて漁師にでもなるかな。じいちゃんの跡継いで」 りょ、漁師? そういえば、佐野のおじいさんは漁師だと前聞いた。だからってちょっと飛躍しすぎじゃないかと戸惑っていると 「お前は港で待っててくれよ」 また変なことを言い出すからさらに困惑する。 「み、みなと?」 「そう、俺が船で大漁旗靡かせて帰ってくるから」 ごろりと向きを変えてこちらを向く。その顔が妙に自信ありげで不安なんて微塵もないから、私はきょとんとしてしまった。
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