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漁師になるって言っても...... 「泳げないんじゃないの?」 「ライフジャケットで何とかなる」 「タコとか嫌いでしょ?獲れたらどうするの?」 「う……何とかする」 「ぷっ」 渋い顔をする彼に堪らず吹き出す。 佐野が海から帰ってくる時間に港に迎えに行く。 船の上からいつものようにしれっとした顔で軽く手を振る佐野は漁師姿でも絵になっている。 港って冬とか寒そうだなぁ。 とかリアルに想像する自分がおかしかった。 でも、そういうのもいいかもと思ってしまった自分にちょっと驚く。 佐野のクビがかかったことなのに、不謹慎だけどどうにもおかしくて。私はただおなかを押さえてケラケラと笑っていると、ふと佐野の手が視界に入ってきた。 頬を捕らえられた瞬間、顔に影が落ちてきて、息が止まった。 それがキスだったとわかるのは唇が離れてから十秒以上経ってからだったけど。
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