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「と、隣だったんだね」
「ああ、大沢の仲介で一年前からここ」
「そ、そうなんだ。あ、ね、猫飼ってるの?」
「今だけ預かってる。姉貴の。仕事で忙しいんだと」
愛想はないけど端的に返してくる。
私、今までにないくらい自ら佐野とコミュニケーションを取ろうとしている。
佐野も一応は応えてくれている。これなら探りを入れられるかもしれない。
「あの、昨日のことなんですが......」
「昨日?」
佐野の両眉が上がった顔がこちらを向く。
初めて今日佐野が私をまともに見た。
きょとんとする様から何を指しているのかわからない様子。
どうやら昨日晒してしまったゲームは暗くて見えなかったみたいだ。
よかったと胸を撫で下ろす。
「いや、何でも……」
「あー、高校ジャージのこと?それともお前がオタク腐女子だってこと?」
思い当たった様子で不意に言われたからすぐに言葉を発することができない。
私は口を戦慄かせた。
「あ、あ……」
やっぱり佐野にバレていた。
半分覚悟は決めていたとはいえ、やはり羞恥とショックで血の気が引いていく。
佐野は微かに秀麗な顔を傾けて私を見下ろした。
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